14 April, 2018

塩漬けの八重櫻

SAKURA bouquet

 今年のお花見、やっといけました。

Spring harvest

 桜の花が咲いてからの降雪、ここのところは寒の戻りだったり、暴風吹き荒れたりお日様はよく照っているけど不安定な天候が続いています。桜も3月末には満開を迎え、今年は一週間、季節が早送りされている感じですね。友人と共同で作業している畑も急いで種撒きして、次の季節を迎える準備を駆け足ではじめています。
 この春はお花見する時間が結局取れなくて車で移動中に都心の桜を窓越しに眺めるだけでしたが、お花見、やっといけました。
 場所は神奈川県大井町。小田急線で新宿から80分、車でいくと東名高速、右ルート左ルートにわかれて富士山がドカーンと目の前にあらわれるあそこです。東京を同心円の中心にひろがってきた都市と、山、森、海、自然の狭間、里山とよばれる風景の残る場所。この場所に強く惹かれ、通って、そこからひとといとなみをみてきた友人の誘いで、お花見をしながらそのお花を収穫する!というはじめての体験をしてきました。(友人が展開している活動はこちら「Shiinoki Retreat」)
 というのも実は、目的はお花見ではなくて、この地域は桜の塩漬けの有名な産地。全国シェア8割。海外からも注目されているこの場所で、この時期に満開となる八重桜、関山(カンザン)の収穫のお手伝いをさせていただいたのです。


Cherry harvest


 30枚以上の花びらが幾重にも重なりピンクに色づき、大きなもので5cmほどになる桜の花を、ひとつひとつ手で摘み取っていく作業。桜の塩漬けにするのは、つぼみだけなのかな、と思っていたけれど、つぼみも花もすべて摘んじゃう。その後、塩と梅酢で漬け込んで、干した後に完成となる。熟練の方になると2、3時間で1本の樹をまるっと収穫されるらしい。桜はどうしたって季節がきたら一気に開いてしまうもの。収穫もそのタイミングに合わせて10日ほどの間に全て収穫しなければならないので、本気モードで収穫していると桜を愛でている時間はないそうです。とはいえ、ぼくらはいつも見ているだけの桜の花。ひとつづつ手を伸ばし枝から摘んでいくそれは、手の中で桜のブーケのようになって、それをまた眺め、写真を撮って...もちろん、なかなか作業は進みません。

 農家のかたにお昼を用意していただいて一息ついて、摘んでいた桜の木の下にシートひろげてお昼ご飯。木に残る桜をながめ、摘み終えてケースにまとめられた桜を見ながら、塩漬けの桜を細かく切ってご飯に混ぜ込んだ桜のおにぎりを頬張る。もちろん、なかなか作業は進みません。


Onigiri with Sakura pickling in salt




View from the top of the hill at Ooi Kanagawa 2018

 
 都心から一時間強でこられる場所には大自然と呼べるような広がりのある景色があって、小高い丘からは、はるか東に横浜、南に相模湾、真鶴岬、北に大山、東に富士山をのぞむ。里山の定義はいろいろあるけれど、ここはひとと自然とのまじわる場所だと思う。ひとの手が入りながら自然との距離感を保ち、つかず離れずに寄り添っている。むしろ積極的にひとの手を入れることによって、ひとと自然が共に過ごしやすい時間を保っている場所。
 写真を撮っていると「誰も足を踏み入れたことのない未踏の地」「誰も見たことのない風景」というものへの憧れがある。写真家の水越武さんや冒険家の石川直樹さんの撮る山岳写真のような、たどり着いたもの、狙い続けたものにしか見ることのできない景色、ひとの手の届かない自然の場所、ひとを寄せ付けない厳しい環境や、動植物たちが自然のままの姿で在る世界。そういったエクストリームな場所への憧憬は確かに好奇心をくすぐるけれど、いま目の前に広がっているこの風景はいずれ誰も見たことのない景色になってしまうのかもしれない。ひとがいるからこそひろがるこの場所、ひとも変わるし、時代も変わる、町も自然も生き物のように変わり続けていく。ここはそんな絶妙なバランスの上に成り立っている境界線のような場所なんではないか、そう感じながらシャッターを切っていた。

 畑ではいつも土と汗にまみれての収穫だけど、こんなにハッピーな収穫体験ははじめてでした。桜の花は春先に目で見て楽しむものだったけれど、これからは、収穫するもの、料理するもの、そして一年通じて美味しいただくものになりました。ごちそうさまでした♪


pickling Sakura before salted


桜の塩漬けを使った美味しいレシピ、ご助言くださーい♪

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